A 私の回答

 

Ⅰ 遺言について
 Q1 遺言なんて必要ないじゃん?!
 我が国では、古くから遺言による遺産処分が認められていました。
 徳川時代には、少なくとも一部の地方の一部の階層(町人の家持層)で「死後譲り」又は遺言状で跡式・亭主の地位と財産の処理を定めておくことが原則とされるなど、遺言相続主義をとっていたといえる状況にあったようです。
 ところが、明治以降になると、遺言はそれほどみられなくなったのです。というのは、明治民法が『戸主制度』をとり、戸主に全遺産を相続させる代わりに、家長として家を守り親族の面倒をみさせることとしたため、遺産争いが少なく、遺言をする人もあまりいなかったのでしょう。どうもその感覚が現在も残っているようです。
 第二次大戦の敗戦により制定された民法が『共同均分相続・配偶者相続』(個人財産とその相続)の原則を採ったのです。それがこれまでの国民意識に反し、農業経営や中小工業の経営に必要な家産の分散をもたらすとして、財産を一人に集中させる遺言が推奨される一方、そのような遺言は民法の趣旨に反し、前近代的関係を温存するものであるとの批判があり、相続放棄や遺産分割協議書が活用され、遺言はあまり利用されなかった、とのことです。
 しかし、時が経過し、共同均分相続の意識が国民に定着するにつれて、遺産争いが次第に多くなり、遺言をする人も増加し、昭和40年代以降になると遺言ブームなどと言われる状況になりました。
 今でも、「遺言をするほどの財産もないのですが…」と言う方が多いのです。謙遜なのか、或いは遺言を普通はしないと考えているのでしょう。一方、外国人と結婚した女性は、「私の夫の国では遺言をするのが原則です。私も既に2回遺言書を作り替えました。私の母にも遺言書を作ってもらいたいので、母を連れて来ました。」と言います。遺言書を作るのは、当たり前。時代の流れなのです。

Q2 どういう人が遺言書をつくっているのかな?
 私は、平成16年12月に東京・蒲田公証役場に公証人として着任し、平成27年2月退任しました。その間に約1900通の遺言公正証書を作成しています。平成22年9月から平成26年7月までの間に私が作成した遺言公正証書合計838通を分類整理して、遺言公正証書の利用の実情を紹介しましょう。ただし、私は、ある時期から、銀行や弁護士等の持ち込む案件を相公証人に担当してもらい、その代わり社会福祉協議会等で公証相談を担当して、その関係の遺言案件を処理するようになったため、ここで取り上げた遺言案件は庶民型の傾向が強くなっているかも知れません。

Q 男性と女性のどちらが遺言書を多く作っていると思いますか?
  ①男性 356名、 ②女性 482名
 女性が約57%を占めています。私は、資産を保有しがちな男性の方が多く遺言をしているのかなと思ったのですが、どうも保有資産の多さと遺言は正比例しないようです。
 夫は、「うちの子は仲が良いから遺産争いなんかしないよ。」と大様に構え、妻は、生真面目に子の様子を心配しがちです。このような男女の性格ないし立場の違いや、夫の遺産を引き継いだ妻が子への遺産分配の責任を負うことが、女性に遺言が多い原因のように思われます。

Q 遺言は、亡くなる前にすれば良いのでしょう?
 ①30歳代 2名、②40歳代 12名、③50歳代 40名、④60歳代 132名、⑤70歳代 225名、⑥80歳代 324名、⑦90歳代 88名、⑧100歳 1名、102歳 2名、103歳 1名
  80歳代が約39%と最も多く、次いで70歳代が約27%となり、7~80歳代の遺言者が約66%を占めます。
  30歳代で遺言をしたのは、30歳代後半の子のいない夫婦です。子に恵まれないことがはっきりすると、親や兄弟姉妹に相続させたくない、と、夫婦でお互いに全財産を相続させあう遺言をしに来ることが多いのです。
 40歳代の遺言者の12人のうち6人にも子がおらず、配偶者や弟、妹に全財産を相続させ、或いは知人や慈善団体に遺贈する遺言をしています。他の2人は親から貰った財産を親へ返し、2人は再婚するに当たって実子或いは新妻に相続させ、1人は同族会社を守るため同社の株式を身内に相続させる遺言のみをし、1人は前にした遺言を撤回する遺言をしています
 100歳代の遺言者4名のうち2名には銀行や税理士が関わっており、その余の2名には、そのような者はいませんが、その代わり遺言者自らが私に積極的に遺言内容を説明しくれ、その矍鑠(かくしやく)たる様子には立ち会った証人共々驚歎したものです。
 7~80歳になると自他共に遺言を意識するようです。私は75歳ころを遺言適齢期と称し、その年齢になるまでに一度遺言書を作成することを勧めています。

Q どういう職業の人に遺言書を作る傾向があると思いますか?
 ①無職 573名、②不動産賃貸管理業 81名、③その他の自営業 36名、④会社役員 80名、⑤会社員・事務員 30名、⑥税理士・弁護士・医師等 14名、⑦パート・アルバイト 12名、⑧公務員・団体職員 5名、⑨その他 7名(専従、作詞家など)。
  無職が多いのは、遺言する時に高齢となっているからです。有職者の職業をみると、ある程度は社会内で遺言をする人々のイメージがわくでしょう。

Q 遺言しようと思う動機は、何でしょうか?
 ある女性が、「夫の遺産は、妻である私が全部もらえると思っていたのに!」と叫び声をあげたことがあります。しかし、民法900条は、第一順位の相続人を子、第二順位を親、第三順位を兄弟姉妹とし、配偶者をその共同相続人としているのです。配偶者の相続分は、子がいる場合は2分の1、親が共同相続人の場合は3分の2、兄弟姉妹の場合4分の3。つまり、妻は、夫の遺言がないと、夫の全財産を相続できないのです。残念でした。
 ことに、子のいないことが、遺言をする(させる)強い動機となっています。というのは、子がいないと、嫁姑、小姑らが共同相続人として現れて、そのような者と遺産分割の協議をしなければならないからです。
 子、親、兄弟姉妹で同順位の相続人が複数いるときは、各自の相続分は平等です(民法900条4項)。しかし、子ら或いは兄弟姉妹と遺言者との間には親疎の差があり、均等に相続させると実質的に不平等な結果となることがあります。そのため、遺言により遺産分配の公平を図らざるを得ないのです。
  遺言の動機は、遺言書の付言欄に記載されることがあります。その記載がなくても遺言内容からある程度の推察はできます。
 そこで、大変荒っぽいのですが、遺言の動機を分類すると、概ね次のようになります。なお、以下には撤回のみの4例は除きました。
1 子がいないため 290例 (約35%)
  子がいない場合の相続又は遺贈する相手方(主な者で分類。なお、1例は妻と弟に均分相続。
 ①配偶者   109名(35組70名が夫婦一緒に公証役場へ訪れて作成)
 ②親      2名  
 ③叔母     1名 
 ④兄弟等   62名  
 ⑤甥姪等   74名(甥姪の子を含む。) 
 ⑥配偶者の身内、遠戚・姻戚 12名 
 ⑦知人等   30名 (同居者等・9、親友等・11、福祉団体・お寺等・9、遺言者の設立し            た法人・1)  
  子がいないため、夫婦揃って遺言をしに公証役場を訪れる方がとても多いのです。一度も結婚したことがなかったり、或いは、配偶者を亡くして、子も親もいないと、兄弟姉妹が相続権を持ちます。その兄弟仲の悪いことが、遺言書を作る動因なのです。親しい甥姪に遺産をあげたいとする人も多く、そのような身内がいないと、親友や福祉団体等に寄付しています。 夫から相続した財産なので、夫の身内に返す人もいます。

2 子のいる事例 544例 (約65%)
 ① 全遺産を配偶者へ   83名
   一般的な家庭は夫婦が経済単位です。夫婦の一方が亡くなっても、子との関係ですぐには変化しません。しかし、民法は、例えば、夫が亡くなると、夫の財産の半分を妻に相続させ、残り半分を子たちに相続させます。そのようにすると、妻の財産は半減し、老後の生活が不安となるばかりか、やっかいな嫁姑の力関係も逆転して、哀れな老後となるのです。妻が夫の遺言に強い関心を持つのは当然のことであり、また、子たちとしては、遺された母の介護等を考えれば、母が亡くなってから、残された親の遺産を相続すれば良いのです。
   私がそのような話をしたところ、特定の子に遺産を相続させる遺言をしに訪れた男性が、全財産を妻に相続させ、妻に先立たれた場合に特定の子に相続させる遺言内容に変更したことがあります。そのような事例もここに含まれています。
 ② 家族への遺産分配の方法を具体的に定めたい 194名
   資産が多かったり、或いは、銀行や税理士等が遺言書の作成に関わると、家族に適宜遺産を分配することが多くなります。これは遺留分に配慮したというより、遺言を巡るトラブルをできるだけ避けたいとの思惑によるところが大きいようです。
   その遺産分配の具体的な方法には、次の遺言の動機が、大きな影響を与えています。
 ③ 自己の後継ぎへ  60名
   遺言者が自己の後継ぎであると名指して特定の子に相続させることがあります。家業を継がせる目的のほか、自分が家を守ってきたという意識の強い女性が「自己の後継ぎ」と表現した場合もここに含めました。
 ④ 老後の面倒を見てくれる子へ  94名
   子の法定相続分は平等です。しかし、子の親への関わり方にはかなり違いがあります。親の介護に当たっている子もいれば、親元に顔も出さない子もいます。そのような子たちに均等に遺産分けをするのは実質的に不公平です。そのようなことにならぬよう、親が、遺言で、子に対する適切な遺産分配を定めておくべきなのです。
 ⑤ 自分の子にあげたい  22名
  夫に自己の遺産を相続させたくない、として遺言書を作りに来る妻が一人ならずおりました。    また、先妻・先夫に引き取られた子に自己の遺産を残して、自己の思いを伝えたいという人もいます。 再婚するに当たって、お互いに子がいることから、それぞれの固有財産を自らの子に相続させるという夫婦財産契約のような遺言もあります。 相続人が子一人なのに、その子への遺産の引き継ぎを容易にする目的から遺言書を作成した人もいます。
 ⑥ 子どもに問題あるため  62名
   親に対し侮辱的な言動を繰り返していたことから、その子を相続人から廃除したい、とする人もいます。廃除事由に該当する具体的な事実の説明があれば、それを要約して遺言の趣旨に記載し、将来の家庭裁判所での審理に備えることになります。廃除事由に該当しないときは、付言欄で触れます。遺言書に廃除の意思表示を明記すると、遺言執行者は遅滞なく家庭裁判所に廃除の請求をしなければならないからです(民法893条)。 破産し或いは破産しないまでもこれまでに多額の資金供与をしたことから、その子には遺産をやりたくないとする人もいます。 前妻が連れ去った子や認知した子、或いは所在が分からない子がいるため、遺言をせざるを得なくなる場合も少なくありません。それらもここに含めました。 なお、嫁姑の確執から長男夫婦が疎遠となり、長男に遺産をやりたくないとする親も多いのですが、他の子が親の面倒を見ていることが多く、上記④に分類しました。
 ⑦ 親からの遺産又は自己の固有資産を兄弟等へ  9名
    実家から相続した財産なので他の家に流れては困る、とか、自己の固有財産なので自分の身内に渡したい、という事例です。
 ⑧ その他  20名 
  ⅰ遺言執行者を信託銀行或いは弁護士に指定する遺言をしたが、遺言執行報酬が高いので、遺言執行者を受遺者に変更したい、とか、ⅱとりあえず前の遺言を撤回したい、ⅲ予備的遺言を追加したい、ⅳ不動産についてのみ遺言しておきたい等々の事例です。
  なお、財産の一部についてのみの遺言は、残余財産の取扱いを巡って紛争を生じるおそれがあるため、全財産について遺言をするよう勧めるのですが、会社の後継者に株式を継がせたい、とか、この不動産を渡す相手が決まったので、その遺言書を作って欲しい、と嘱託されることがあります。


Q 遺言を実行する人(遺言執行者)には、どのような人がなっていますか?
 民法1009条は「未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない。」としているので、相続人、受遺者及び証人も、本条に該当しない限り、遺言執行者になれます
  法人も事業目的に反しない限り、遺言執行者になることができると解されています。
 例えば、FPICは、「後見、後見監督等に関する事業及び公正証書遺言者に対する支援事業」を公益目的事業としているため、任意後見人を受任して財産管理に当たり、被後見人が死亡したら、引き続き遺言執行者として遺産分配をすることができます。FPICによる遺言執行は、身寄りもなく私産もさほどない人に対する支援です。
  遺言執行者  834例 
  ①受遺者  652例、②弁護士 55例、③司法書士 30例、④行政書士 5例、⑤社会福祉士 1例、⑥税理士 55例、⑦銀行 17例、⑧その他 19例(FPICや業者)
 なお、受遺者と税理士が列記して指定された事例は、主に遺言執行に当たることが予定されている方としました。
   受遺者が遺言執行者の約4分の3を占めています。受遺者本人が相続財産の引継をするのが簡便だからです。しかし、受遺者によっては、遺言執行に際し他の相続人と接触することを厭うことがあります。そのようなときや、相続税の申告や遺留分の減殺請求が予想される場合には、税理士を遺言執行に関与させることを勧めました。というのは、税理士は、相続税の申告手続をし、財産目録の作成や遺留分の算定の専門家だからです。
   また、私は、FPICが任意後見人を受任した場合には、FPICに遺言執行者になるように依頼したことがあります。FPICは、元家裁調査官が設立した公益法人であり、任意後見人に相応しい団体です。そして、FPICが被後見人から預かった財産について、引き続き遺言執行者として関わることが望ましいからです。
   大田社協は、任意後見人を受任しますが、死後事務や遺言執行は担当しません。
   その他11例にFPICが含まれており、他に相続コーディネイト業等をする会社があります。  
  弁護士や司法書士、行政書士、社会福祉士、銀行が遺言執行者に指定されたのは、遺言者を公証役場に取り次いだ上自ら遺言執行を担当しようとする事例です。むろん、遺言者を公証役場に取り次ぎながら、遺言執行者(場合によっては証人にも)にならないことがあります。


Q 遺言立会証人には、どのような人がなっていますか?
 民法969条は、遺言公正証書の方式として証人2名の立会を必要としました。その趣旨について、学説は、「証人の立会は、遺言者に人違いのないこと、精神状態の確かなこと、作られた遺言が真実に成立したものであることを証明すると共に、他面、公証人の職権濫用を防止する目的にでるものである」(中川監修・註解相続法297頁等)としています。
 証人  1676名
   ①FPIC 829名 ②社協 308名 ③弁護士(職員を含む。以下士業については同じ。) 127名 ④司法書士 144名、⑤行政書士 37名、⑥社会福祉士3名、⑦税理士・会計士 113名、⑧銀行員 38名、⑨親族(欠格事由や利害関係のない人)や知人 68名、⑩業者9名
 FPICと社協で約68%を占めます。他の人に遺言内容や財産関係を知られたくないなどとして、自ら証人を用意できない人たちがとても多く、そのような人たちを私が取り次ぎました。それ以外は遺言者が用意した証人たちです。 

Q 遺言公正証書の作成の手数料は、どのくらいかかっていますか?
  公証人が嘱託人から受ける手数料等は、公証人手数料令により定められています
  手数料は、法律行為については目的価額による手数料算定を原則とし、定額手数料制を併用し、用紙の枚数による加算制(証書の枚数が3枚を超えるときは、超える枚数1枚ごとに250円が加算)を採用しています。法律行為の目的価額(誰に幾ら相当の財産が移転するのか。土地建物は固定資産評価額により、借地権は路線価を基準として借地権価格を算定し、現金・預貯金等は口頭申告に拠ります。)による手数料額は、ⅰ100万円まで5.000円、ⅱ200万円まで7.000円、ⅲ500万円まで11.000円、ⅳ1.000万円まで17.000円、ⅴ3.000万円まで23.000円、ⅵ5.000万円まで29.000円、ⅶ1億円まで43.000円、ⅷ 以下超過額5.000万円までごとに、3億円まで13.000円、10億円まで11.000円、10億円を超えるもの8000円加算となっています。2つ以上の法律行為があるときは、法律行為ごとに計算した手数料を合算します。つまり数人に財産を相続させる遺言は、相続人それぞれに財産を移転する法律行為となるので、相続人ごとに計算した手数料を合算します。祭祀主宰者の指定は、系譜、祭具及び墳墓の所有権等の承継を伴いますので、価額の算定不能な財産の移転として11.000円です。
 予備的(補充)遺言、例えば「全財産を妻に相続させる。ただし、妻が亡くなった場合には妻に替えて子3人に均等の割合で相続させる。」とした場合、予備的遺言により算定した手数料の方が高くなります。そして、高い方の手数料によるとする公証人が多いようです。同じ手数料令でも、公証人による解釈適用が違うことがあるのです。
 なお、目的の価額が1億円までの場合は、11.000円が加算されます。
 た、病床で作成したときは、規定の手数料額(遺言加算、枚数加算等の加算をする前の額)の5割増しです。 
 公証人が出張したときは、日当1万円(4時間以内の場合)及び交通費の実費がかかります。公正証書の正本・謄本の作成・交付の手数料は、1枚250円です。
 私の作成した遺言公正証書の作成手数料をみますと、 ①1万円台 8件、 ②2万円台 54件、 ③3万円台 177件、 ④4万円台 117件、⑤5万円台 127件、 ⑥6万円台 89件、 ⑦7万円台 69件、⑧8~9万円台 78件、 ⑨10~14万円台 64件、 ⑩15~19万円台 34件、⑪20~29万円台 16件、⑫30から39万円台 3件、⑬48万円台 1件、⑭76万円台 1件です。
 最も多いのが3万円台(約21%)であり、3万円台から5万円台で半数を占めます。
 最も低額の1万円台8件のうち3件(各1万2500円)は撤回のみの遺言であり、残り4件(1万8000円ないし1万9500円)は、ⅰ内妻、ⅱ同居者、ⅲ兄、ⅳ面倒を見てくれている人に一切の財産(ⅰ30万円、ⅱ60万円、ⅲ80万円、ⅳ200万円各相当)を遺贈又は相続させる事例です。
  私が、銀行等の持ち込む遺言案件をもっと手がけておれば、高額の手数料事例が更に多くなったでしょう。
 おわりに
 遺言をするのは今や有り触れたことなのです。要は遺言書を作る気になるかどうかなのです。遺言をするには、それなりの背景事情があります。 生活保護を受けるような人たちも遺言書を作りに来ます。 公証役場に遺言公正証書がないかどうかを確かめに訪れ、日本公証人連合会本部から該当者が見当たらないとの回答を得て、得心した様子で帰る人を見ますと、その思いを強くします(遺言検索システムについて日公連ホームページ参照)。 遺言書はないよりあった方が良く、遺言公正証書にしておいた方がもっと良いのです。と言うのは、遺言公正証書は、文字通り、「公に正しいという証明付きの遺言書」として、社会内ですぐ通用するからです。そのため公証人は慎重に遺言公正証書を作成しているのです。 遺言者自らが公証役場を訪れることが多いのですが、その中には家族に同伴されて来る人もいます。遺言者が入院中等であれば仲介者が来ますが、公証人は、遺言者と会って必ずその意向を確認します。 遺言者が高齢化すると、すぐ、遺言能力を問題とします。しかし、日々のように、高齢化して介護を受けざるを得ない身となって、子たち或いは甥姪らの意向に振り回されている遺言者の様子を見ていますと、遺言能力ではなく、周辺の者が問題なのだ!と思うのです。

Q3 遺言書は、四十九日を過ぎてから開くものですか?
  遺言は、亡くなってすぐ効力を生じます(民法§985①)。そのため、遺言書の保管者は、遺言者の亡くなったあと、遅れることなく、家庭裁判所に遺言書を提出して検認手続を取らなければなりません(民法§1004①)。なお、これは自筆遺言書のことです。遺言公正証書であれば、裁判所の検認手続を受ける必要はなく、遺言執行者となったら、直ちに遺言公正証書に基づいた遺産分配をしなければならないのです(民法§1007①)。

Ⅱ 離婚について
 Q 離婚するに当たって、どういうことを念頭に置けば良いのですか?
 とりあえず、家庭問題情報誌「ふぁみりお」第49号アラカルト "協議離婚やADR調停と公正証書‘’をお読み下さい。公益社団法人家庭問題情報センターのホームページの左端にある「家庭問題情報誌「ふぁみりお」の発行」をクリックすると出て来ますし、奥林潔でネット検索して出て来ます。

Ⅲ 弁護士であれば、誰でも同じじゃない?
  弁護士資格を取得するには学識を備える必要があります。そのことから、弁護士であれば、どなたに依頼しても大差はないと言えるでしょう。しかし、それぞれの経験に由来する差異や個性差があることも否定できません。ポイントは相性が合うかどうかです。
 拙著「司法は個に拠る」(ネット検索可)参照。